ヘンリー・ダーガー展

原宿の工房の帰りに、ラフォーレミュージアムに寄って、ヘンリー・ダーガー展を観てきました。何年か前に一点だけ、銀座で観たことがあって、不思議な絵だなーと印象に残っていたのだった。その時は、どういう人なのかよくわからず、作品だけを観たのだけど、今回のはダーガーという人の、生い立ちから、部屋の様子から、遺品まで見れる展示だった。箱いっぱいの短い鉛筆や、ものすごい厚みのスクラップブックなど、遺品の展示コーナで、背筋が、ぞわぞわーっとした。あの感じは何だったのだろう。きっと、誰にも知られていなかった彼の作品を、世に出そうとした人も、遺品を見て、ただならぬものを感じたに違いない。「非現実の王国」の世界で、不条理と病んだ社会に、苦しめられたり、勝利したりする純真の姿。作品は痛いものも多かったけど、目をそむけたくなるような痛さではなかった。妄想を書き出すことで、自己を救っていたのだろう。誰にも見せることなく、ただひたすら描かれた、ひとりの人間の存在の証。今になって、こうやって多くの人に見られているということに、あの世のダーガーさんは、どう思っているのでしょうか。

「駒井哲郎」展

GWの終わり頃、町田市国際版画美術館で「駒井哲郎」展を観てきました。版画をやるようになってから、ずっと気になっていた美術館で、いつも良い企画をやっているのに、なかなか行く機会がなかったけど、駒井哲郎は見逃せないな…ということで、行ってきた。展示室の入り口の所に、本人が実際に使っていたプレス機が展示されていて、そこで銅版画の制作実演をやっていた。プレス機は小さくて、コンパクトだった。これくらいなら家に置けそうだなーと思いつつ、実演をあとに展示室へ。作品は、だいたい、どれも小さかった。一番好きなのは「束の間の幻影」↓版画に関心を持ち始めた頃、初めてこれを見た時に、わア!と思って、ますます版画をやってみたくなったのだった。今回はそれの、いくつかのパターン違いが観れてよかった。展示をずーっと観て行くと、技法も作風も様々で、こだわりや、力みがない。自分のスタイルって、何なのだろう?とちょっと悩んでいたので、時にはクレーのように、他の誰かのように、こんなのやってみました風に、作品を作っていたのがわかる。なんか自由だなぁ、と思ったのでした。本当は「自分流」みたいなものに、縛られる必要なんかなくて、やりたいようにやればいいんだなと、そうしていくうちに、きっと見えてくるものがあるんだ、と。そんなことを、教えられた気がした。美術館からの、帰りの昇り坂はきつかったけど、なんだか、ふっとした開放感を味わうことができて、とても良かった。はやく自分も銅板に、何か描きたくなったのでした。むずむず。

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