エクウス(馬)

雨の水曜日、友人と自由劇場へ。劇団四季のストレートプレイ「エクウス(馬)」を観る。シンプルな舞台装置。回想シーンも、診察室も、少年の家も映画館も、馬舎も、全部同じ囲いと長椅子を使って、同じ場所で演じられている。小道具はほとんどなし。こちらの想像力を、ちゃんとかきたてられるようにできてるんだなぁと、引き込まれる。本当に馬のような動きをする役者、巧みな照明。この照明が、まるで衣装のようになる場面はスゴいです。丁寧に語られるセリフにも、考えさせられるものがあった。正常って何だろう?本当はものすごい不自然を強いられた人間が、世間からみたら、普通とか、まともとかいう人なんじゃないか?とか思えてくる。ああやって生で演じられると、観客は両者の心情を汲みとることができるものだなぁ。少年の心は純粋で、人間の野生を美しく見せてくれたのでした。よい体験ができました。
寄り道は地元に帰ってから。前を通るたびに気になっていた串焼き屋さんで、久々の友人とちょっと一杯飲んで、感想やら近況やらをお喋りして帰ってきました。雨の止まない水曜日、良い夜を過ごすことができたのでした。

マルメロの陽光

スペインの映画監督、ビクトル・エリセが好きだ。1作目の「ミツバチのささやき」を学生の頃、有楽町の小さな映画館で、何度も観たっけ。その頃は映画を作るサークルにいたから仲間内でも話題の作品だった。そして2作目の「エル・スール」少女の目線と静かな映像美は忘れられない。そしてこの間、エリセの3作目となる、画家を撮ったドキュメンタリー風の映画「マルメロの陽光」というのがあると教えてもらった。もう10年以上前の映画なのに、3作目がある事を最近まで知らなかったのだ。そして、なんとかして観た。またしても、静かな感動が。じわりじわりとやってくる。画家がひたすら終わらない絵を描いている。犬が吠えている。工事の音が響いている。雨が降る。マルメロが熟していく。友人と語らい、歌う。特別なことは何も起こらない。坦々とした時間の流れに、人生の縮図が見える。言葉では表すことのできないものがたくさん。画家が見ているものは、言葉では言えない。だから絵を描く。その姿が語るものもまた、言葉にできない。だから映像になる。この映画の持つ2重構造には画家と監督それぞれの、表現に対する深い愛情を感じさせられた。まがりなりにも絵を描く者として考えた。完成することや結果が問題なのではない、それよりも描くというプロセスを愛すること。それは人生においても、死ぬために生きるのではない、今生きているというプロセスを愛する、ということと同じなのではないかと。

甥っ子画伯

風の強い土曜日、ママと遊びに来てくれた、5歳と2歳の甥っ子たちは、お絵描きも大好き。子供の絵はいつだって素晴らしいです。大人にはなかなか描けないのびのび感に溢れています。お兄ちゃんのほうは「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」や「コープス・ブライド」が大好きで何度もDVDを見ている。将来の夢はティム・バートンに会って、一緒にお人形を作ること、だそうです。いいな、それ!その夢がかなったら、わたしも付き添うからね。なんて。

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