四月と十月

「でんえん」での搬入が終わった日、お店にある雑誌を見ていたら、味わい深い表紙の本を見付けた。「画家のノート・四月と十月」という白黒の本。「見本」と表紙に書いてある。ここで売っているみたい。画家のエッセイと作品の写真が見開きに載っている同人誌で、静かだけれど、なんかいいなーと、とても共感する空気が漂ってくる。気になって巻末を見たら、発行しているのは牧野伊三夫さんだった。牧野さんはうちのダンナさんと、お互い、若いグラフィックデザイナーだった頃のお知り合いだ。私も個展にお邪魔したことがあったり、雑誌や何かでその後の活躍を時折、目にしていた。気がつけば壁にかけてあるコーヒーチケットも牧野さんの作品だった。ママさんに聞いたら、昔はよくお店に来ていたんだそう。おもしろい偶然だなあ。。。牧野さんによれば、この同人誌の目的は、画家であるお互いの創作活動を励ましあうもの・・・ということで、なるほど、この静かであたたかい空気感は、その目的にあるのだなあと納得。批評のようなものは書かれていないのだ。もう18号も出しているんですね。欲しくなって最新号を一部購入。読んでいるうちに、私もなんだか励まされたような気持ちになったのでした。

画家のノート・四月と十月

アコーディオン演奏会

今、作品を展示させてもらっている、名曲喫茶「でんえん」でアコーディオンの演奏会があるというのいうので、時間に合わせて行ってみた。お店のドアを開けたら、なにやらいつになく賑わっている。「今日は取材が入っててね。ちょうどよかったわ。」とママさん。店内はカメラや機材やスタッフで混んでいる。30年来のお客さまという方がちょうど八丈島から来ていて、インタビューを受けているところだった。ママさんとしばしお話。このごろ、取材が多くなってきたんだそうだ。こういうお店は今は本当に貴重ですもんねぇ。今回はBSiでやる音楽名店を紹介するシリーズだそうだ。少し遅れてアコーディオン奏者の三上ヤスヒロさんが到着したので、ごあいさつ。三上さんは、よくここで演奏会をしているのだそう。今日はその演奏の模様を撮るらしい。いろいろ準備のあとコンサート開始。照明で、明るくなった店内。いつもと様子が違うので、、、と言いつつ演奏が始まった。映画音楽いろいろ。ニューシネマパラダイスがとてもよかったなー。好きな曲だし。アコーディオンの音色はどこか懐かしくてあたたかいですね。7月15日放送だそうだけど、どんな風に放送されるんだろう?見たいな。あ、でも、BSiって、うち、見れないんだったーー!

ベジャール追悼公演

昨年11月に亡くなった偉大な振付家、モーリス・ベジャールの追悼公演でモーリス・ベジャール・バレエ団が来日中。東京公演の初日に行ってきた。ベジャール作品をそんなに沢山知っているわけではないけれど、初めて「ボレロ」をTVで見た時の衝撃は忘れられない。その昔、私がまだ高校生だった頃、ベジャールバレエ団は当時、ベルギーに拠点を置く、20世紀バレエ団という名で、東京バレエ団との公演をしに来日した様子を、NHKで見たのだ。バレエをやっていた私は、ジョルジュ・ドンが踊っていた「ボレロ」を見たとき、「わあ!なにこれ!こんなバレエって見たことない!なんてかっこいいんだ!」と衝撃を受け、録画したビデオを何度も見て、振り付けを真似したりしたものだ。
そのボレロはこれまで様々なエトワールたちによって踊り継がれてきた。でも舞台で見たことが一度もない。当時の私と同じ年齢になった上の娘もベジャールバレエのファンなので、学校帰りに待ち合わせて、上野文化会館へ。演目は「これが死か」「イーゴリとわたしたち」「祈りとダンス」そして二部は「ボレロ」。一部の公演が終わり、やっぱりすごいね!などと言いつつ、休憩時間にロビーへ。ロビーにはベジャールが実際に着た、リア王の衣装と、愛用の椅子と愛読書(下の写真)がディスプレイされていた。席に戻ろうかというところで、ファッションデザイナーの山本耀司さん発見!山本耀司さんだ!と声に出して言ってしまったため、目が合っちゃったかも。ど、どーも、20年前に買ったコート、今でもまだ着ていますよぉ。それは声に出さずに言ったけど。なんかワクワクするなー、この状況。他にも色んな人が来てたみたい。

今日は追悼公演であるということと、ベジャールが大好きだった日本の観客に感謝をこめてということで、「ボレロ」の前にもう一曲、追加演目があるというアナウンスが!観客も思わぬサプライズに沸いた。もしかして「アダージェットだったりして?」そして二部の幕が開く。「あ、舞台の真ん中に椅子が・・・そしてジル・ロマンがいる!あー、やっぱりアダージェットだ!!」マーラーの曲が静かに流れる。私はもうすでに泣きそうだ。大好きなジル・ロマンのアダージェット。今では、彼しか踊ることを許されていない作品だ。以前一度だけ舞台で観たことがあるけど、再び生で観れるなんて、本当にラッキー!ジル・ロマンが踊るアダージェットは切なく、さらに哀悼の意が込められ、まるで祈りのようだ。ああ、なんて素晴らしい!!涙が出てきて大変だった。本当に感動しました。ベジャールの魂がこの会場に来ているな・・・ということを感じた人は、私だけでなく、たくさんいたと思う。そして最後はボレロ。踊り手はエリザベット・ロス。リズムと呼ばれる群舞は男性ダンサー全員。やっと舞台で観れたよ。お気に入り作品が2つ、連続で見れたなんて。バレエの舞台を観てこんなに感激したのは初めてだ。ボレロのあの、だんだんと激しくなってゆく音楽と共に、過ぎ去ってゆく時間が惜しいくらいだった。娘もよほど感動した様子で、「イヤなことがあったら、今日のことを思い出すことにするよ。」と言っていた!そうだね。楽屋出口でカンパニー所属の日本人ダンサー、那須野さんのサインももらえたしね!素晴らしい芸術体験でした。ベジャールさん、ありがとう。
昨年の11月、家に来た金魚は、「ベジャールさん」と名づけられ、今ではうちのベジャールさんは、まるまると太って、毎日元気に、ひらひら泳いでおります。

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