トンボが生まれた日のこと

朝、部屋の窓辺で開いた蓮の花のそばにトンボがひらひら。花から生まれたのか?不思議に思ってよく見たら、茎の根元にヤゴのぬけがらを発見。変身したてのトンボは、薄い小さな羽をキラキラさせて、東の窓から夏空に向かって飛んで行きました。これをfacebookに投稿したら、友達が「蓮の花の咲くところからトンボの姿を借りて会いにきたのかな…?」とコメントをくれて、わたしは、はっとした。ああ、そうかもしれない!そうだとしたら嬉しいな。。なんだか足のあたりが、ジワーんとして温かいものがこみ上げてきた。そういえばお墓参りへ行ったりすると、必ずと言っていいほど、蝶が来たり、鳥が鳴いたりする。そういう時も、確かにそんな気がするのを思い出した。あんなに小さくて、きれいなトンボは見たことがない。新しい羽は透き通っていて、あまりにも繊細で、体はうすい緑色をしていた。

それは瓜南直子さんの、追悼展を観に行く日だった。
不思議な気分のまま、銀座で友人とランチをして、ギャラリーに行くと、瓜南さんの世界が広がっていた。また会えたと思った。葬儀の時、何も言葉をかけられなかったことが、ずっと心残りだったパートナーの伴清一郎さんと、今度はちゃんとお話をすることができて、ありがたかった。そして思わぬ出会いと再会もあった。生き生きとした瓜南さんの作品に囲まれて、献杯をした。

そこには、月を背にしたトンボの絵があった。

そして、幾つかの絵の中には、ピンク色をした蓮の花が咲いていた。

その日の夜のはじめには
薄青く暮れてゆく東の空に
見事なまでの満月が、ぽっかりと浮かんでいた。

絵師・瓜南直子のあしあと ’00 / ’09 ーちいさな追悼展ー

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