春の足ぶみ

いよいよ来たかと思うと冬が戻ってきたりで、駆け足ではなく足ぶみしているような春。今年の東京の桜は、開花から終わりまでずいぶんゆっくりだった。

次の展示まで間があくし、アトリエもごちゃごちゃしてきたので、今がチャンス!とばかりに部屋を模様替え。増えた本、しばらく使わなかったもの、もう着ないもの、押入れの中まで全部出して、処分したり、整理したりと片付け三昧。思い出のものが出てきたりすると、あれこれ思い出したりしながら、それは大事にしまったり飾り直したり。

子育てしている間は、子どもたちにとにかくご飯を食べさせて、身の回りの世話をして、幼稚園やら学校やら習い事やらで毎日が一生懸命だった。夫のおかげで家のことと子育てに専念できたのはありがたかった。わたしのような人間では働きながら子育てするのは多分無理だったと思う。様々な支えがあって、日々の暮らしを積み重ねて、子どもたちは心身ともに大人になった。

わたしは育児の合間に、何かにつき動かされるように、誰に見せるでもない絵を描いていた。版画やテンペラをやる前の、その頃の絵は大きくて重くて暗い。何かを吐き出すようにして描いていたんだろうと思う。描けば描くほど保管に困り、キャンバスを木枠から外して丸めてしまっておいた。そんな過去の作品の束が、押入れの奥からたくさん出てきた。これらを広げることは、もうないだろうな。わたしが死んだら、家族はこの作品の処分に困るだろうな…。そんなことを思いながら、その大きくて暗くて重い作品の束をいっぺんに処分した。同じようなものを描きたくなったら、また描けばいい。そんなふうに思えるようになったのも今だから、かもしれない。つべこべと書きなぐっていたようなノートの類も、ひとまとめにして処分。そうしたらなんだかさっぱりして、身が軽くなったような感覚になった。何かリセットされたみたいに。。。

そんな作業が落ち着いたところでホッとひと息。不安定なお天気の晴れ間を見計らって、近所でお花見をした。ここへ来たばかりの頃、まだ若木だった桜の木も、年々成長して立派になっている。子どもも桜も成長したけれど、わたしは、、どうなんだろう…..。

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