のスナップ

2005年11月

*個展雑感*

ああ、終わってしまったな。
いつもながらひとまずほっとする。
今回は、前回とは作風がガラリと変わってしまい、正直、見てもらうのは
ドキドキものだった。抽象と具象の間を、揺れ動きつつ
母性らしきものまで、出てきてしまったものだから
人さまにお見せするのは どんなもんかと思われた。
でも、しょうがないな、こうなってしまったわけだから
それを見てもらうより しかたない。
ハラハラしながら、初日を迎えた。

いつも見てくれている人には「どうしたの?」
と聞かれるくらいの変わりよう。 だよね。
そのせいもあってか 見る人は その人なりに 積極的に何かを
感じ取ろうとしてくれているようだった。
そのことが ありがたくて、とりあえず救われる思い。
初日を終えてみて、ハラハラはおさまった。

今回のテーマを「記憶の落書き」としたのは
普段は意識していなくても ココロのなかにある
ぼんやりしたものを、 照らす スイッチみたいに、
何かを思い出すことの きっかけのようなものに、なってくれればいいなあ
と思ったからだった。
私自身、描いているときが、まさにそんなふうだったから。
目を閉じなければ 見えないものが たくさんある。
昔のことだとか、なんだか わからないけれど、感触だけは なんとなく
覚えているような ものごととか、そういうものを 思い出しながら
なんとか 形にしていくという 作業だったのだ。

いろいろエピソードがあるんだけど
猫のシリーズを、しばらく 黙って見ていた女性が、
目を潤ませながら、「いいですね」みたいなことを 言ってくれた
と思ったら、飼っている老猫のことを 思い出してしまって と言いながら
ぽろぽろと、泣き出してしまった。
私は、びっくりして、ティッシュを出してあげたりして
とりつくろったけど、あんまり気の利いた言葉が 見つからなかった。
私もネコ派なもので、、とかなんとか変なこと言っちゃった気がする。
こういう時は どうしたらいいんだろう。
初対面の方だったし、絵の前で泣かれちゃうなんて、初めてのことだった。
彼女の内に、猫との生活の いろんなことが 思い出されてきたのだろうな。
スイッチが入ってしまった 彼女の優しい悲しみの波動が
こちらにも、ぞわぞわーっと伝わってきて、
どうしていいか わからないでいる私のココロのなかに
ぽっと、明かりのようなものを灯したのだった。
泣かせてしまったけど、何かを思い出す、きっかけになったのだ。
そのことを思うと、私も泣けてきます。

9月の終わりに、シェル美術賞に出品して
見事に落選した80号の「Tears Blossom」という絵があります。
大きいので個展には出さなかったけど
終わってみれば
「涙、咲く」という思いを込めて描いたそれが
何か次に つながるような気がしてきたのでした。

自信もなく、不安なまま始まった今回の
個展だったけど、見てくれた方たちの力に
助けられながら、一日一日が過ぎて
いきました。最終日の最後の最後まで。
この一週間、貴重な体験ができたことを
かみしめながら、11月もまた
終わってゆくのでした。

[BacK]