のスナップ

2002年10月

10/2 ベランダのハンガーがみんなそろって踊っている。
青空に雲はピンク。干したゾーキンひらひら。
柔らかくなったダンボール。台風のあと。
ふやけて波打つダンボール。落ち着かない金魚。
南風も冷たくなってきた。だんだんと
トーンダウンして色数が減ってゆく日暮れ時。
どこへ行くの その飛行機。どうか無事で。

 
10/8 朝 ぼんやり目が覚めた時いきなり
「あ、私の分の始まりだ。私の役目を今日も生きよう」というような
言葉ではなくて、そういう質を持った感覚が体の中に
すっと入ってきて、パッと起き上がった。
小さい、何かぽよんとした固まりのような
柔らかいけど境界のはっきりした、そういうモノが
体の中にすっと入ってきたのだった。
それは、さっきまで夢の世界にいた魂のようなものが、
現実世界に戻ってくるかのようだった。
その魂みたいなのがほんの少し遅刻したので、タイミングがずれて
私に戻ってくるところを、覚られてしまったかのようだった。
私が、ちょっとびっくりしている瞬間
それは、もう当たり前のように
朝ごはんのことや洗濯の心配をしているのだった。
朝っぱらから、初めての不思議な感覚だった。
あれは何だったんだろう?

10/9 伝えたいこととはなんだ?
荷物を届けるようにして、届けることはできるのだろうか?
偶然をフィックス。
色になったココロ。

10/11 デッサンのままをダイレクトに単色で描いてみる。
単色で描くテンペラは、すこしピアノっぽい感じがする。


10/13 憧れとは何でしょう?という疑問があったけど
憧れとは、未来の自分に抱くものではないかと思ったりした。
未来の自分とは、今の自分につながっている。
基点はいつもココにあるのだった。

10/18 クリーム色と紫と緑。

10/19 ずんずんと描いていて、思った。
評価なんていいや と。
それよりもこの行為を、描くというこの行為を
捧げるような想いと覚悟。大事なのはそれだ。
こうやって表現して、続けていく行為。
行為そのものを信じてやるしかないような気もする。

10/24 行為を天に捧げるように。
誰かのところへ、いつか降ってくるように。

10/26 目を閉じてココロを開くとなにか見えるものがある。
体内カメラはないでしょうか?
そうやって目を閉じているうちに、
色もカタチもはっきりした絵が浮かぶ。
それを、一瞬で焼き付けることができたら
思い通りの作品ができるのに。
手、もどかしい手。
もっとスラスラとイメージを形にする力を・・・
凡才のジレンマ。

10/31 夢の中で誰かと話していて
「それはできないけど、与えることならできるかもしれない」
と私が言おうとしたところで目が覚めた。
覚ました目は昇ろうとする朝陽の一直線上だった。
街の上で、薄っぺらな板のように光るオレンジ色をすぐにとらえた。
それからみるみるうちに朝陽が昇ってくる。
あっという間に丸く昇りきって黄色く変わってしまった。
言わずじまいだった夢の中の台詞が夜と朝をつなげていた。
またしても、意味深な朝だ。

10/31 思い通りに描くことができず、駄目かな?と思ったけど
この小さなサムホールの平面に、情熱を呼びながら向かい合ってみた。
あきらめることをあきらめて、続けてみた。
そうやって、正直に描いたことは確かだ。

私は、行為である作品によって
人に何かを与えることはできるのだろうか?
伝えることと、与えることは似てるけど違う。
違うけど、似てる。
それが問題だ。

[BacK]